平成 11年 2月 23日(火)
演 題 「50代からの健康管理について」
講 師 仙台徳州会病院名誉院長 佐藤清春先生
於:ブラザー軒
「虚血性心疾患の予防」
今月は、近年増加の傾向にある虚血性心疾患の予防についてお話しします。虚血性心疾患の代表は、狭心症と心筋梗塞です。仙台徳州会病院では、昨年、これらの疾患に対する内科的治療としての経皮的冠動脈形成術(風せん療法)が100例に、外科的治療としての冠動脈バイパス術が50例に行われましたが、いずれの治療も冠動脈の狭くなったところを拡張したり、バイパス路を造設したりする方法で、これらの疾患の原因である動脈硬化の促進を予防する抜本治療ではありません。
動脈硬化は生活習慣病といわれています。冠動脈に動脈硬化が進行すれば狭心症、心筋梗塞となり、脳の動脈に動脈硬化が進行すれば脳梗塞となります。現代の日本の三代死因の二つが、心疾患と脳血管疾患であることを考えると、動脈硬化の促進を予防すれば三大死因の二つから解放され、更に脳血管疾患が最大の原因となっている老年痴呆にもならずに済むというわけです。
それでは、どうしたら動脈硬化の促進を予防できるのでしょうか。動脈硬化を促進させる危険因子には、「加齢」のように自分ではどうすることもできないものもありますが、努力によって改善できるものとして、次の四つを挙げることができます。
@高血圧
A高コレステロール血症
B糖尿病
C喫煙
@〜Bは生活習慣病に分類される病気で、習慣を改善させることが予防につながります。Cは生活習慣そのものです。
食生活でまず気をつけなければならないのは過食です。過食による「肥満」は、高血圧高コレステロール血症、糖尿病のいずれとも深くかかわっています。肥満には「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」があリますが、後者のおなかだけが出ているような太り方をしている人は、特に注意しなければなりません。 次にコレステロールの多い食品を控えることです。血液中の総コレステロール値を160〜220mg/dl、中性脂肪を50〜150mg/dlの範囲にしたいもので総コレステロール値の高い人は、バター、卵、レバー、イクラ、いか、クリームなどの乳製品などを食べ過ぎないようにしたいものです。
また、コレステロールには、善玉(HDL)コレステロールと悪玉(LDL)コレステロールがありますが、HDLには動脈硬化を防ぐ作用があります、HDLを増やすには、
@適度な運動を行う
A動物性の油脂を控え、植物性の油脂にする
Bさば、いわしなど背の青い魚を食べる
C適量のアルコールを飲む
などが効果があります。 塩分を控える。血圧が高いと血管がもろくなり動脈硬化が進行します、血圧の正常範囲は最高血圧が140以下、最低血圧が90以下です。高血圧の予防や改善には、塩分を控えた食生活に心がけるとともに肥満の解消や適度な運動を心がけることも大切です。生活改善でも高血圧の人は、降圧薬によるコントロールが必要になってきます。
たばこをやめる。たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させ血圧を上げたり、動脈硬化を促進したり、血液を固まりやすくします。適度の飲酒。アルコールは少量であれば動脈硬化を抑える作用があります。少量のアルコールとは、1日ビール1本以下あるいは日本酒1合以下です。運動も動脈硬化の予防に大切です。適度な運動は肥満の解消に効果があり、高血圧、糖尿病にも影響を及ぼします。運動には、ウオーキングが最適で、少し汗をかくぐらいの早足で30分以上歩き続け、週に3回以上続けることが大切です。
以上のような生活習慣を心掛けて動脈硬化の促進を予防し、狭心症、心筋梗塞にならないようにしましよう。