演 題 「景観と建築」
講 師 東北工業大学 工業意匠学科 二瓶博厚先生
平成14年9月3日(火)
於:ブラザー軒
地域の景観と建築
地域の歴史・文化を含めた環境総体の中で
建築をどのような姿勢で組みたて、つくってきたか
□地域の風景をつくる 三春町歴史民俗資料館
・ まちづくりと建築家
・ 歴史的まちなみと建築
・ 自然地形と建築
・ 地域の景観と造形
□市街地の中での建築 福島県立美術館
・ 与えられた環境を最大限生かす
・ 山の線を借景して景観をつくる
・ 調和・形態・素材・色彩
□福島県と公共建築
・ 福島県建築文化賞
・ 公共建築に求められるもの
□地域のくらしをつくる
・ 「くらし」と景観 岩手県大野村「道の駅」
・ 蔵の再生・まちなみへの参加 一関「文学の蔵」構想
□東北工業大学「新棟の計画」
プロフィール ニ瓶 博厚(にへい ひろあつ)
現職・東北工業大学工業意匠学科教授
1945年 福島県二本松市生まれ。県立福島高等学校卒業
東京大学工学部建築学科卒業 同大学院博士課程中退
1970年 X大高建築設計事務所入所
1994年 4月より東北工業大学工業意匠学科教授
〔作品リスト〕
・千葉港臨海公園計画/千葉県立美術館・筑波新都市記念館
・多摩ニュータウンセンター/集塵センター
・三春町歴史民俗資料館/自由民権記念館・福島県立美術館
・富士病院増築病棟/特別養護老人ホーム愛日荘園
・横浜博覧会/国際交流館/横浜館・横浜市歴史博物館
(以上大高設計事務所在職中の作品)
・おおの村道の駅・一関市「文学の蔵」基本構想
・東北工業大学図番館/銘板/案内板・総合案内板
・東北工業大学新棟
新棟「環境情報工学科研究棟・教育棟」の計画
東北工業大学香澄町キャンパス新2号館新営工事
(東北工業大学新棟建設委員会版より抜粋)
キャンパス北側、市道八木山線より<教育棟><研究棟>を望む
模型製作 二瓶研究室 撮影 八重樫研究室
◆建築概要
工事名称 東北工業大学香澄町キャンパス新2号館新営
工事場所 仙台市太白区八木山香澄町35−1
建物用途 学校(大学)
建築主 学校法人東北工業大学 理事長 工藤 寛
基本構想 新棟建設委員会 委員長 平舘 幸男
委 員 二瓶 博厚 志田 正男
基本設計 新棟建設委員会委員 二瓶 博厚
安芸構造事務所 古川 洋
大瀧設備事務所 大瀧 牧世
設計協同 新棟建設委員会委員 二瓶 博厚
同上 関・空間設計 川股 重也(研究棟制振装置の設計・指導)
監理 関・空間設計
新棟建設委員会(アドバイザー)二瓶 博厚 志田 正男
東北工業大学 会計課
施工 建築工事 戸田・共立建設 共同企業体
機械設備工事 ダイダン 東北支店
電気工事 三機工業 東北支店
■ 計画主旨
平成13年4月、本学6番目の学科、環境情報工学科が新しくスタートした。ITと環境を結び環境保全に調和と共生をもたらす技術システムの確立を目指す学科である。この新学科と教室群を含む新棟の建設が平成15年春の完成を目指し進められている。計画地は香澄町キャンパス2号館の跡地である。 新棟建設委員会委員としてこの計画に加わり、平成12年8月より作業を開始。建築構想から実質的にデザインし、工業意匠学科二瓶研究室・建築学科志田研究室の学生諸君の協力を得ながら建設委員会案としてまとめた。 計画にあたっては、本学および新学科を象徴する建築とすることを目標に、香澄町キャンパスの従来の箱型建築の観念にとらわれず新しい発想で取り組んでいる。
計画の基本理念と基本方針
本学および新学科を象徴し、学内外の人々に本学のシンボルとしてイメージされるような建築とする。 新学科設立の主旨を踏まえながら、理念に基づいた計画とする。
基本本方針
1. 研究と教育環境、各々の機能と独自性を重視する
(1) 研究棟・教育棟と分離し分棟型とする
両者を一体とし階層で分ける方法も当然考えられるが、動線の錯綜、学生の移動時の騒音などお互い不都合なことが多い。また、比較的大きい単位(教室)の集合である教室ブロックと、小さな ユニットで構成される研究ブロックでは、構造の基準となるスパンも異なり、分棟型にした方が構造的にはるかに合理的である。
(2) 教育棟を松並木公道側に低層で配置
公道側は、道路斜線のため建築物の高さが制限される。一棟の建物で計画した場合中庭側に寄せざるを得ず、敷地の有効活用が計れない。本案は教育棟を可能な限り道路側に寄せて配置し3階建と低層で構成している。
(3) 研究棟は8階建てで中庭側に配置
主に教員室・研修室で構成される研究棟は、その室内環境を考慮し、片廊下方式として建物の厚さをできるだけ薄くする。縦方向にのびるシンプルな形とする。
(4) 教育棟と研究棟をつなぐ空間−コロネードの提案
低層棟と高層棟の間は、単なる隙間となってはならない。旧2号館前の通路は3・8号館への主要なサービス動線となっていた。この機能を損なわずにコロネード空間とし、雨に濡れない<通り>をつくり、研究棟と教育棟をつなぐ空間とする。
2. 研究棟に2層吹抜けの多目的スペースを提案
基本理念でうたっているように新学科を象徴し、また学内外の人々に本学のシンボルとしてイメージされるような建築とするためにはそれを具現化する核となるスペースがどうしても必要になってくる。本案では多目的教室と呼んでいるが、基本的には学生の交流の場として位置づける。
本学の活動、新学科の内容を伝えるギャラリー機能も付加。更には簡便な集会、研修、講義にも対応できる空間となるよう工夫したい。
3. 周囲との開係に留意し調和のとれた環境をつくる
(1) 北側公道沿いの松並木
これらの松は原則として伐採しないで新しい景観に生かしたい。
(2) 新棟の形態
新棟は敷地に対して容積が極めて大きいので、計画にあたっては、キャンパス全体としての過密感を少しでも軽減するよう努める。
低層、高層と分棟して全体の姿を構成し、高層部と低層部を対比させシンボル性をもたせる。
(3) 中庭との関係
現在の中庭は、本キャンパスの主要なオープンスペースである。反面、有効に活用されていないきらいもある。研究棟1階の多目的スペースとの関連を持たせ、中庭の有効な利用を計る。
4. 環境へ配慮した計画
新学科の内容にふさわしい環境へ配慮した設備の考え方も計画に盛り込む。
具体的には、太陽光など自然エネルギーの活用、雨水の再利用、また屋上緑化なども視野に入れた計画とする。